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春風亭朝枝
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春風亭与いち

vol.3 第一回【後編】

【寅の子会】は仲の良さがダダ漏れな二人がじゃれあう会に?

朝枝さんは春風亭一朝一門の末っ子弟子。そして、与いちさんは春風亭一之輔一門の二番弟子。一之輔師匠が一朝師匠の二番弟子なので、朝枝さんと与いちさんは、一門の中で叔父・甥っ子という繋がりになります。とはいえ、香盤的には2年の開きしかなく、前座修行も一緒にこなした近しい存在。二人が同じ寅年生まれということから始まったこの二人会、開催にあたって、お二人に対談をお願いしました。好きなタレントの話から、前座時代の上下関係、そしてお互いにどんなふうに思っているかなど、縦横無尽にお話いただきました!

春風亭朝枝×与いちインタビュー写真

――朝枝さんに伺いたいのですが、与いちさんが二ツ目になってからの高座を観た印象を教えていただけますか?

朝枝:客席の雰囲気を汲み取るのがすごく上手ですよね。浅草演芸ホールでの二ツ目昇進披露目の初日、柳亭市馬師匠(現・落語協会会長)が与いちの出番のひとつ前で、高座返し(座布団を裏返すこと)されたじゃないですか。ご覧になってましたよね?

――はい。拝見していました。袖にいらした朝枝さんが、目を見開いて、「え? 何が起こったの???」という顔をされていたのがチラリと見えました(笑)。

朝枝:(笑)。それだけビックリしたんです。そんなことあり得ませんからね。そのあとに上がった与いちは高座で何を言うんだろう、と思ったらすごく気になっちゃったんですが、市馬師匠を立てつつ、上手くまとめていたので、感心しました。

――可愛がられるキャラですよね(笑)。逆に与いちさんに伺います。朝枝さんの高座の印象は?

与いちあにさんが前座のときは客として見ていましたからね。私もそうなんですが、いろんな師匠方に噺を教わり教わった通りにやるので、噺によって“毛色”が違ってくるんです。落語には“自分”というものが存在しないので、AというネタとBというネタを私がやったとしても、教わった師匠が違うがゆえに、別人がやっているんじゃないかと思うくらい変わってしまうことが多くあって。でもあにさんの落語は、前座のときからそうですが、いい意味で“春風亭朝枝として変わらないまま進化し続けている”という印象です。一本、筋の通った方だとずっと思っていましたが、本当にそれは感服しています。私はまだまだそれができてないですね。

朝枝:(感嘆して)すっごい真面目だねぇ、与いちは。ボケないの? ふざけないの(笑)?

与いち:私だって真面目なこと、言いますよ!

春風亭朝枝×与いちインタビュー写真

――朝枝さんがこんなに後輩を愛でる姿、初めて拝見しました!!! 愛が伝わってきますね。

朝枝:一門での香盤の中で見ると、初めてできた弟弟子ですから(笑)。

――朝枝さんからすると与いちさんの師匠である一之輔師匠は兄弟子で、朝枝さんの師匠である一朝師匠は与いちさんにとっては大師匠でもあります。大師匠、兄弟子についての思いを聞かせてください。

与いち:大師匠という存在は本当に貴重ですし、偉大です。落語界で、いわゆる“大師匠”という存在の方が第一線でバリバリ活躍されている、というのは珍しいんですよね。なかなかほかの一門では見かけないというか、今だと五街道雲助師匠のところなど本当に数えるくらいしかないと思います。大師匠はとにかく親身になって色々教えてくださるので、ひとつでも多く吸収して、なるべく近づきたいなと、そういう思いでいます。

朝枝:上の兄弟子たちのことはみんな尊敬しています。一之輔師匠も尊敬する兄弟子のひとり。

与いち:兄弟弟子の中でもうちの師匠はちょっと異色ですよね? 私は自分の師匠だからそんなふうに思っちゃいますけど……。ほかの兄弟子と感覚が少し違ったりしませんか?

朝枝:そう?

与いち:私にとっては何となくそんな感じです(笑)。

朝枝:みなさん個性的なので、それぞれですね。でも仲がいい一門ですし、とにかく楽しい。一之輔師匠は下をいじったりされますし(笑)。

春風亭朝枝×与いちインタビュー写真

――朝枝さんもいじられますか?

朝枝:それはもう、等しく(笑)。

与いち:柳朝師匠が優しくすべてを包み込んでくださる中、うちの師匠がかき回しつつ笑いを煽るというか……。一応、キーになっているようなポジションですね(笑)。

―――お二人はプライベートで会ったりされるんですか?

与いち:私がもう少しお酒が飲めればお付き合いができるんですが……。あにさんは兄さんで、気を遣って私のことを誘わなかったりするんですよ。(朝枝さんに向かって)さっき、兄さんに二丁目に連れて行ってもらったときの話をしたんです。

朝枝:ああ(笑)。そうです。新宿、好きですねぇ。

――二丁目が特にお好きなんですか?

朝枝:新宿という街全体が好きなんです(笑)。新宿にはゴールデン街もあれば二丁目もあり、歌舞伎町もある。ホストクラブもありながら、ちょっと行くと御苑という美しい公園もあります。新宿にはいろんな顔がありますから。住めるなら、住みたいです(笑)。今は行けなくて、本当に寂しいですね。

――話が逸れ気味ですね、すみません(笑)。さて、【寅の子会】はこれからゆるゆると、長く続けていければよいと思っていますが、ぜひお二人の意気込みをお聞かせください。

朝枝:お互い、ケガをすることなく、健康第一に(笑)。

与いち:どれだけじゃれ合うつもりですか、あにさん!!!

朝枝:でも、のびのびやりたいですね。

与いち:そういうの、いいですね。

――どんな噺をかけようかな、とか、もうありますか?

与いち:内緒です(笑)。6月末なので、夏の噺なんてできたらいいですけどね。

朝枝:そうなの? 私はまだ考えてないですね……(笑)。

与いち:そんなこと言いながら、フタを開けたら『牛ほめ』とかかけたりして(笑)。

朝枝:(笑)。

――ありがとうございました! 一朝一門の中では末っ子の兄弟子が一之輔一門の次男坊を愛でまくり、逆に次男坊が突っ込み続けるという構図が新鮮でした(笑)。当日の化学反応を楽しみにしています。

  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA
  • profile
  • 春風亭朝枝(しゅんぷうてい ちょうし)1986年4月12日生まれ 丙寅(ひのえ とら)2015年2月16日、春風亭一朝に入門。
  • 春風亭与いち(しゅんぷうてい よいち)1998年4月5日生まれ 戊寅(つちのえ とら)2017年3月、春風亭一之輔に入門。
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