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春風亭与いち

vol.2 第一回【前編】その2

一之輔師匠も認める"噺の覚えの速さ"。季節の噺や大ネタにも強心臓で挑む!

2021年3月に二ツ目に昇進を果たした春風亭与いちさん。二ツ目になったばかりだというのに、先日初めて行われた初の勉強会は満員御礼、大盛況のうちに終了。軽妙な語り口や、高座の間にふと見せる仕草、そして観客をたっぷり沸かせるマクラを見ていると、インタビュー中に与いちさんが「大好き!」と何度も口にした師匠・春風亭一之輔さんの雰囲気を色濃く受け継いでいるのが分かります。
そんな与いちさんを紐解くべく、【寅の子会】開催前にインタビューを行いました。

春風亭与いちインタビュー写真

「コロナ禍だけど、腐っていたくない。
ここでどれだけ踏ん張れるかが、大事です」 ――与いち

与いちさんは今年の3月1日に二ツ目に昇進。コロナ禍で迎えた"二ツ目"に対する思いについて伺いました。

――二ツ目になると決まったときの気持ちをお聞かせください!

与いち:これでやっと前座が終わるんだなと思ったら、本当にそれはもう、嬉しかったです!

――そんな解放感の中、残念ながらコロナ禍に見舞われてしまいましたが、与いちさんは今の状況をどういうふうに捉えていますか?

与いち:「コロナ禍で落語会がない」というのを言い訳にして、腐ってしまったり、家で稽古をしているだけではダメなのでは、と思っています。自分たちでどんどん動いていかないと、埋もれてしまいそうな気がしていて。【落語】は開催しやすい芸能だからこそ、ウイルスのせいにして動かないのはどうなのかなって……。ここでどれだけ踏ん張れるか、それが重要ですよね。

――こんな時期に昇進したのは、アンラッキーだったと思ったりしませんか?

与いち:上も下も関係なく仕事がない状態になってしまったので、むしろ今は“みんなが同じスタート位置に立っている”ような感覚もあるんです。ここでどれだけ勝負ができるかで、実力が反映されるタイミングなのではないでしょうか。本当に頭ひとつ抜きんでている噺家しか表に出られない状況だからこそ、そこで頑張っていけたら、より目立つこともできるんじゃないかと思っています。

春風亭与いちインタビュー写真

前座の頃からコツコツ覚えてきた噺は現在40ほど。
一番好きなのは、一門の噺でもある、あのハナシ!

『寅の子会』も、与いちさんがさらなる実力を発揮できる場所のひとつとして、どんどん大きくなっていけたらいいなと思っています! 

――ところで、与いちさんはどうやって噺を覚えているのでしょうか? 確か、一之輔師匠はインタビューで与いちさんのことを「噺の覚えが早い」とおっしゃっていた気がします。

与いち:はい。そう言ってくださっていました。ほかの方がどんな覚え方をしているのか比較したことがないので分かりませんが、今持っている噺は40くらいあります。うちの師匠の教えは、「家の雑用をしないでいい分、前座のときからたくさんの噺を覚えなさい」というもの。それに従ってできるだけ覚えてきたという感じです。覚え方にはそれぞれのスタイルがあると思うのですが、私はまず【文字起こし】をします。そのあとは、例えば電車の中では何度も聴くことで、家では所作を交えながら、起こした文字をひたすら声に出して読んでます。

――気持ちが入ってくると上下(かみしも)を振り始めちゃうから、外では声を出せないとおっしゃってた噺家さんがいらっしゃいました(笑)。

与いち:私も外ではできないです(笑)。周りの景色が気になっちゃうとできないので、散歩しながらは無理ですね。15分くらいの寄席ネタであれば1週間くらいで覚えますが、それはあくまでもクオリティは関係なくて、とりあえず人前でできるというだけです。

――ご自身でやっていて好きだとか、楽しい噺は何ですか?

与いち:『唖の釣』ですかね。出てくる人がみんなヌケていて、とても楽しいです。

――一朝一門・一之輔一門の噺ですもんね!

与いち:それもあるのですが、談志師匠の『唖の釣』も好きで、プロになったら覚えたい噺としてずっと心にあったんです。すごくバカバカしい噺で、(鯉を演じる)あの所作を大人が真剣にやるというのが何とも面白くて(笑)。私は正朝師匠から教わりましたが、師匠が何度もあの所作(※実際に目の前で与いちさんが実演中)をやり直しさせるんです。「違う! こうだ!」って(笑)。それがおかしくて、笑いを堪えるのに必死! 次に覚えたいなぁと思っているのは夏の噺です。まだまだネタ数が少ないのに季節モノの噺を覚えるのはどうかとも思うのですが、どうしても覚えたいんですよね。ネタの名前は内緒です。夏前に覚えられればどこかで披露できますかね……(笑)

入門エピソードから“しくじり話”まで大いに語っていただいた前編はここまで。後編では実際の高座についてのお話、そして、いよいよ『寅の子会』を一緒に盛り上げていただく春風亭朝枝さんについていただいたコメントを公開します! 甥っ子から見て、朝枝さんの存在とは?
後編をお楽しみに! 

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  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA