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春風亭与いち

vol.3 第一回【後編】その1

香盤の近い朝枝さんは、兄弟子的存在。まったくブレない高座が「すごいです!」

2021年3月に二ツ目に昇進を果たした春風亭与いちさん。二ツ目になったばかりだというのに、先日初めて行われた初の勉強会は満員御礼、大盛況のうちに終了。軽妙な語り口や、高座の間にふと見せる仕草、そして観客をたっぷり沸かせるマクラを見ていると、インタビュー中に与いちさんが「大好き!」と何度も口にした師匠・春風亭一之輔さんの雰囲気を色濃く受け継いでいるのが分かります。
そんな与いちさんを紐解くべく、【寅の子会】開催前にインタビューを行いました。

春風亭与いちインタビュー写真

ダイナミックな高座姿を見せるも、実は小さなことでシュンとするほど、繊細。

前座時代からダイナミックな高座で注目を集めていた与いちさん。高座に上がる回数も増えてきましたが、心境に変化はあるのでしょうか?

――高座では緊張されますか?

与いち:今はめちゃめちゃ緊張します!
前座のときは緊張しなかったですけど……。あ、それには理由があるんです。“前座”は寄席では料金に含まれてないですし、ホールでの落語会だとチラシに名前が載らない存在です。だから、変な言い方かもしれませんが、ウケてもウケなくても、その会自体のお客様の満足度に対する“自分の責任”は少ないんですよね。もちろん、そこで笑いが取れれば後々自分のお客さんになってもらえるかもしれないので「ウケたい」という意気込みで臨みますが、ある意味“無責任な立場”なので、あまり緊張しないんです。

春風亭与いちインタビュー写真

――なるほど。でも与いちさんはわりと強心臓といいますか(笑)、気が小さいほうではない気がするのですが……。

与いち:いや、小さいほうです(笑)。ちょっとしたことでシュンとしちゃいますから。

――すごく意外です(笑)。

与いち:お客さんがため息なんてつこうものなら、もう終わりです(笑)。この噺はもうダメだ、終わりだー!と思っちゃうんです。ちょっとしたことでブレブレになってしまうので、メンタルをもっと鍛えていきたいです。

――客の立場からいうと、ため息は気にしないでいいと思います。絶対に与いちさんのせいじゃないですから(笑)。話はちょっと変わりますが、与いちさんはご自身の声をどう思っていますか? とても魅力的なお声だと思うのですが。

与いち:私、地声がすごく低いんです。楽屋で働いているときなど、うちの師匠に「自分が思っているよりも、ひと調子高く声を出さないと、陰気に聞こえる」としょっちゅう指摘されるほどで。だから高座ではなるべく声を張って、普段の声よりも高く出すようにしています。それが理由なのかどうか分かりませんが、女の人を演じるのは苦手です。ちょっとしか出てこない噺はまだましですが、女性だけのやり取りとかになったら、難しそうです……(苦笑)。

朝枝さんの高座を初めて観たときに抱いた、「おじいちゃんみたいな落ち着き」という感想。

さて、いよいよ【寅の子会】での相方となる、春風亭朝枝さんについてお伺いします!

――朝枝さんと初めてお会いになったときの印象を聞かせてください。

与いち:朝枝兄さんが前座のときに、客席で観ていました。一朝師匠のところに最近入った人なんだなぁと思いながら観ていて、入りたてというのも知っていたのですが、入りたてにしてはすごくおじいちゃんみたいな落ち着きがあって(笑)、すごいなと思っていました。

――当時、すでに与いちさんは一之輔師匠のところへ入りたいと思っていたんですよね。

与いち:はい。師匠に手紙を出したり、楽屋に弟子入り志願に行ったりしていましたので、朝枝兄さんもそのことを知っていて、初めて会ったときに「あのとき、一之輔師匠に手紙を渡していたよね」と言われました。覚えていてくださったようです!

春風亭与いちインタビュー写真

――改めて、今の朝枝さんの印象について教えていただけますか?

与いち:㐂いち兄さんよりも私と香盤が近いので、二人目の兄弟子のような気持ちですね。寄席で一緒に働いていた期間も長かったので、色々教わることも多くて。私は勝手に『兄弟子』だと認定しています! でも兄さんがどう思っているかは分かりませんが(笑)。

――インタビューの際に伝えておきます(笑)。長いお付き合いということで、与いちさんだけが知っている『朝枝さんのこんな可愛いところ』を教えてください。

与いち:私だけが知っている……ですか。私だけじゃなく、全ての朝枝ファンに共感してもらいたいのですが、Twitterの絵文字の使い方が可愛いですよね。
"二人会宜しくお願いします🐱🐱"とか、投稿した内容に間違いがあった時に"AではなくBでした…️…🐻❄"みたいな。…の後にその熊なに!?可愛いなぁと思ってしまいます。私が一番好きなのは、"明日は足柄寄席です👣"これです。

  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA

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