interview

春風亭与いち

vol.6 第二回【後編】

半年前からは一皮も二皮も剥け、大ネタにどんどん挑む新進気鋭の二ツ目噺家として活躍中!

初めての【寅の子会】から約4カ月。緊急事態宣言も解除になったタイミング&次回の寅の子会に向けてのインタビューを行うことに。雰囲気だけでも“打ち上げ”っぽくしようということになり、新橋にある老舗バー【バーミモザ】を借り切っての撮影です。
前回の【寅の子会】の感想や、初めてじっくり時間を過ごした叔父弟子の朝枝さんについて、そして二ツ目昇進から半年以上が経過した現在の与いちさんの想いなど、たっぷりと語っていただきました。

春風亭与いちインタビュー写真

トークを回して、軌道修正もしてくれる朝枝兄さん。たっぷり甘えてしまいました♡――与いち

さて、話題は二人会の相方である朝枝さんについて。会の間ずっと一緒にいて、新たに発見した“朝枝さんのこんなところ!”はないのか、聞いてみました。

――朝枝さんとの二人会はいかがでしたか?

与いち:私、兄さんと会をやること自体が初めてだったし、兄さんとのトークも初めてだったんですよ。人前でふたりでトーク!なんて、やったことなかったので。兄さん、さすがですね。すごく安心感があるんです。ちゃんと、軌道修正してくれるというか。

――え?意外です!ほかの二人会だと、朝枝さんはいじられる側なので(笑)。

与いち:それはきっと、兄さんが先輩とやることが多いからじゃないですか? 兄さんのキャリアだとまだまだ二ツ目の後輩という存在が少ないですからね。

――㐂いちさんとやるのとは、また違う感じなんですかね?

与いち:㐂いち兄さんとはまだやったことがないので、どんな感じか分からないんですよね……。今度、第一回とよはし若手落語会(※)で、初めて兄弟会をやるんです。㐂いち兄さんは打つとめちゃめちゃ面白いものが響いてくるんですけど、こっちが打たないと響かないタイプ(笑)。自分から“回す”という感じではないんですが、朝枝兄さんはしっかり進行もしてくださって、すごくやりやすかったです。完全に甘えてましたね(笑)。
※第一回とよはし若手落語会 >>

――甘え上手ですね(笑)。お客様の雰囲気はどうでしたか?

与いち:あったかい感じでした! 受け入れてくださるというか。本当にやりやすくて、ありがたかったです!

春風亭与いちインタビュー写真

改めて気付く、師匠の“マクラ”づくりの巧みさ。アンテナを張って、大喜利脳を育てる。

与いちさんが二ツ目に昇進されてから約半年。“コロナ禍昇進組”として思うように活動ができなかった時期もあったはずですが、今は積極的に会を行っている与いちさんです。

――昇進から半年経って、何か手ごたえというか、変わってきたことはありますか?

与いち:まだまだずっと手探りです。この状況がいつ落ち着くのもかも分からないですし、ずっと自分の中でアタフタしているような印象で……。

――与いちさんは積極的に会を催されている印象です。アタフタしている、というのは噺も覚えなきゃいけないし、会の集客もしなくてはならないという、そういうことですよね?

与いち:はい。料理が上手いとか、ほかに“売り”になるものがあればいいんですが、僕はそれしかできないですから。地道にやり続けるしかありません。

――ぜひ、他の会などもここで宣伝してください!

与いち:実は……。地元・仙台での二ツ目昇進の披露目の会(※)がまだ終わってないんです。うちの師匠と大師匠(一朝師匠)と会場の都合を合わせようと思うと、もう全然合わなくて(苦笑)。ずいぶんと先延ばしになってしまいましたが、ようやく12月2日に仙台で開催できることになりました。まだチケットも取れると思いますので、お時間のある方はぜひお運びいただけると嬉しいです! 
※春風亭与いち 二ツ目昇進記念落語会 @トークネットホール仙台 小ホール >>

――二ツ目になって改めて「一之輔師匠のココがすごい!」と感じることはありますか?

与いち:“マクラの作り方”ですかね。師匠は時事ネタや身の回りのことな、いろんな方向からマクラをしゃべるんです。要は“面白がれるところが多い”んだと思います。アンテナがすごい。いつ聞いても新鮮なマクラじゃないですか。普通、そんな頻度でマクラを変えていたらクオリティが落ちかねないと思うんですが、毎回面白い。

―前座のうちはマクラを振らずに噺をスタートしますからね。自分で振るようになったら、改めて一之輔師匠のすごさを実感したということですね。ご自身ではどういうマクラをつくろうと心がけているんですか?

与いち:日常に“スベらない話”ってそんなにいつもあるわけじゃないですよね。だから、いかに自分の想像の中で話を膨らませられるかということだと思うんです。名前を付けるなら“大喜利脳”ですかね。ひとつの出来事に対して自分はこう思うとか、もしこうだったら面白いとか、少しずつ範囲を広げて、それを繋げていくことでひとつのマクラにしていくプロセスが本当にすごい。僕も知らなかったんですが、うちの師匠が二ツ目のときには“マクラをつくるだけの勉強会”をやっていたんだそうです。真一文字の会をやりながら、『裏一文字の会』といって、お客さんから質問を募ったりしながら、とにかくトークだけの会。

――そうなんですね! 与いちさんもラジオ番組を持ったり、Twitterのスペースでトークをするなど、とても勉強されていると思います。

与いち:お客さん対自分という構図だと、ベクトルの方向は一方通行なんです。お客さんの呼吸を見ながらしゃべるだけですが、ラジオはその空間のみで楽しまなきゃいけないし、かといって聞いている人を置いてけぼりにもできないし……。
ラジオは聞き流すツールなので、こっちの雰囲気が楽しくないとダメ。でもあんまり内輪ネタになってしまうと聞いている人はつまらないし……。高座とはまた違ってこちらも難しいですね。でもひたすら勉強あるのみです!

――いろんなことに果敢に挑戦している与いちさんはとてもカッコよくて素敵だと思います。今回のインタビューもありがとうございました!
【寅の子会】も楽しみにしています!

お酒に見立てたグラスの中はウーロン茶。終始フレッシュジュースを楽しみながら、たっぷりと今の心境を語ってくださった与いちさん。半年前に比べると、グッと男っぽくなった雰囲気も素敵です。
今回の【寅の子会】ではアレが聞けるのか……?どうぞお楽しみに!

  • 撮影協力
  • バー・ミモザ
  • 所在地:東京都港区新橋5-7-7 ロイジェント新橋1F
  • phone:03-6435-8520
  • hair & makeup SHOHEI INOUE
  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA
  • location at BAR MIMOSA

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