interview
春風亭与いち
vol.4【後編】その2
香盤の近い朝枝さんは、兄弟子的存在。まったくブレない高座が「すごいです!」
2021年3月に二ツ目に昇進を果たした春風亭与いちさん。二ツ目になったばかりだというのに、先日初めて行われた初の勉強会は満員御礼、大盛況のうちに終了。軽妙な語り口や、高座の間にふと見せる仕草、そして観客をたっぷり沸かせるマクラを見ていると、インタビュー中に与いちさんが「大好き!」と何度も口にした師匠・春風亭一之輔さんの雰囲気を色濃く受け継いでいるのが分かります。
そんな与いちさんを紐解くべく、【寅の子会】開催前にインタビューを行いました。
「明日からまた頑張ろうと思える、そんな噺ができる噺家になりたいです」――与いち
香盤も近くて、もうひとりの兄弟子のような存在――。朝枝さんについてそう語る与いちさんに、もう少しお二人の関係性を伺います。
――お互いに「ここは絶対に相手にかなわない」と思うところを聞かせていただきたく思います。与いちさんが朝枝さんにかなわないと思っていることは何でしょう?
与いち:落ち着きやブレない感じ、お客様の様子や会場の良し悪しなど、そういうものに一切左右されないところはすごいと思います。
兄さんは、いつどこで聴いてもちゃんとしたクオリティの噺を提供しているんですよね。私なんて、お客さんが携帯電話を鳴らしちゃったり、ちょっとモゾモゾしただけでもダメになっちゃうので……。そういう事態にも左右されない人だと思います。
――与いちさんは本当に繊細ですね。ご自身がTwitterのスペースでやっていらっしゃるトークなどは、先輩のゲストを呼んでも上手にMCされているなと思いますよ。きっとすごく気を遣われているんですね。。
与いち:ありがとうございます! 同期の(三遊亭)歌彦とかと二人でやるのは、気を遣わなくて楽しいですけどね(笑)。
――では「ここだけは朝枝兄さんに勝っている!」と思うところは?
与いち:与いち:それは“若さ”です! ひと回り違いますからね、そこで勝負していくしかないです(笑)。
――肌、ツヤとか、そういうところですか?(笑)
与いち:笑顔とか(笑)。そういうところだけです。
――では、最後に5年後、10年後にどんな噺家になっていたいと思っていますか。今の気持ちをお聞かせください。
与いち:お客様が「いい噺を聴いた」と思うよりも、「元気になった!」と思ってもらえると嬉しいです。いい芝居を一本聴いたというより、明日からまた頑張れそうだというくらいの感想を持ってもらえる噺家になりたいですね。
みずみずしくフレッシュでありながら、『噺家』という職業に対する熱い熱い情熱を抱えている姿がとてもエネルギッシュで印象的だった与いちさん。【寅の子会】でも爆発力のある高座を見せてくださると思います!
ありがとうございました。
- photo by SHITOMICHI
- interview and text by MIHO MAEDA