interview
春風亭与いち
vol.7 第三回【前編】
大舞台でもひるむことなく、お客様を『与いちワールド』に引き込む爆発力。二ツ目昇進丸1年を迎えて、進撃が止まらない!
本格始動した【寅の子会】から約4カ月。寅年になって初めての【寅の子会】はバレンタイン・スペシャルと銘打って開催です。今回はバレンタイン・ディを意識して、TORANOKO CAFÉのパティシエというイメージでの撮影。スイーツを飾り付けたり、ケーキを切ったりと、キッチンで大奮闘した与いちさんに、年男を迎えた気持ちや近況を伺いました!
ハプニングが巻き起こった前回の【寅の子会】。その様子は与いちさんのマクラにも頻出。
今回も最初に来ていただいたのは、与いちさん。都内某所のとあるスペースを借り切っての撮影ですが、想像を遥かに超えたモダンでスタイリッシュなキッチンに与いちさんは「ここで撮影するんですか?」と驚き顔。スイーツをつくるパティシエになりきっていただきました。
――さて、前回(10月24日開催)の【寅の子会】はいかがでしたか?
与いち:いや、もう本当に素敵なお客様ばかりで! 毎回そうですけど、【寅の子会】のお客様は最高なんですよね。 落語を聴きなれてない方も多いと聞いてますが、とてもあったかいです。「ふたりを応援しよう!」という雰囲気に溢れている感じです。ありがたいです。スタッフのみなさんがそういう趣旨で開催してくださっているからだと思います!
――ありがとうございます! そういえば、前回はお父様がわざわざ仙台から足を運んでくださって、しかも抽選会で与いちさんの手ぬぐいがお父様に当たるというハプニングが(笑)。
与いち:本当に(笑)。抽選会での出来事は、時々マクラでも話させてもらっています。 「朝枝兄さんと一緒に二人会をやらせていただいてるんですが、そこで……」って具合に。僕の親父に当たったのも面白かったですけど、そのあとに当たった方がね……(笑)。
――そうですね(笑)。ここであの顛末のすべてを話してしまうのはもったいないです。でも、与いちさんが抽選会でお父様を当てるという引きの強さは、すごいと思います。
与いち:正直に言うと、おいしかったですね(笑)。
――(笑)。そうやって「朝枝兄さんと二人会をやっている」とマクラで話してくださるのも、【寅の子会】にとってはありがたい限りですから。ちなみに、楽屋から大きな笑い声が聞こえてきたりしてましたが、ふたりでどんな話をしているんですか?
与いち:兄さんと? 楽屋で話していることですか? そうですね、この国の未来について語り合ってますね、どうしていこうかって……。
――ちなみに、どんな未来を目指しているんですか?(笑)
与いち:それはやっぱり、我々のチカラでどうやってコロナを退散させようか、とか(笑)。嘘です。もう、完全なバカっ話ばかりですね。誰がこんなことをしてたとか、誰が○○師匠に怒られたとか、あいつはずっとあんなことやってるとか……、もう本当にお客様には話せない、文字通りの“楽屋話”ばかりです。
――先ほどもお話しましたが、【寅の子会】のお客様は落語に今まで触れたことがない、与いちさん、朝枝さんのこともうっすらとしかしらない……なんて方も多いわけです。前回のインタビューのときに「そんな方たちの前でやるのは責任がありますから」とカッコよくおっしゃってましたが、やはりその気持ちは変わりませんか。10月のときは『代脈』と『粗忽の釘』をかけられましたね。
与いち:【寅の子会】は僕を初めて見てくださる方が多いので、あまり“手探り”になってしまう噺はやらないですね。どっちかというと、やっぱり自分が楽しめる噺ランキングの上位にあるやつを披露したいなって思うんです。
『粗忽の釘』は稽古の様子が公開されているので、かなり恥ずかしいんです(苦笑)。――与いち
今回はモダンなリビングで、ハイチェアに座った状態でのインタビュー。単独での撮影は終わっているので、少しだけ「ホッ」とした顔でリラックしている与いちさんに引き続きお話を聞いていきます。
――『粗忽の釘』は一之輔師匠のYoutube『一之輔チャンネル』を観ているというお客様がいらしてて、「それを観ていたので、与いちさんが実際にやってくださって嬉しかった!」とおっしゃってましたよ。
与いち:そうですか! でも、正直に告白するとアレ、やりづらいんですよね……(笑)。師匠のYoutubeで全部種明かしされちゃってますから。しかも、かなり恥ずかしくて、あの動画、僕は全部観てないんです……。
――観てないんですね!(笑)
与いち:はい。チラッとしか観てないです……。ああ、こういう感じかぁ、多分、全部ネタバレしちゃってるんだよなぁ……、って思っちゃって。でも、「観られて嬉しい!」と言ってもらえるのは嬉しいです。「師匠が言ったとおりにやってるな!」とお声をかけてくださる方もいるんですが、そんなこと考えずに(笑)、ぜひ笑ってください!
――確かに。『粗忽の釘』は高座で聴くたびにどんどん変化して、“与いちさんの噺”になっているのを感じます! 話は変わりますが、撮影、慣れてきましたか? 前回の【バー・ミモザ】での撮影よりも今回はリラックスされている気がしました。
与いち:前回の撮影の思い出話? もう、ただただ恥ずかしかったです(笑)。普段カッコつけることなんてないですからね。
――でも、普通に写真撮られるのも苦手そう……(笑)。
与いち:それも正直、正解が分からないんです。お客様と一緒に写真に写ることもありますが、そのときの正解も分かってなくて……。だから、「キザって(※)」なんて言われたら、ますます分からなくなるんです。
※キザる……宝塚用語で、男役がカッコつけること。
――私も一之輔師匠と何度か写真を一緒に撮っていただいたことがありますが、最初は必ず『睨み返し』のときのような顔をされますね(笑)。そのときはキッチン・ミノルさんにシャッター押してもらったんですが、徐々にニコニコされて……。そのときの写真は私のタカラモノです。
与いち:キッチンさんはほぼ身内というか、兄弟弟子のように接してくれるので。内輪ネタみたいな話をしながら、お互いにボケたりツッコんだりしながら撮影するのでリラックスするんですよね。うちの師匠もキッチンさんの撮影だとすごい笑ってますよね(笑)。弟子の僕が言うのもなんですが、すごくいい顔しているなぁって思います。
――確かに! 私たちもそうなれるように(笑)、精進しますね。
- photo by SHITOMICHI
- interview and text by MIHO MAEDA