interview

春風亭朝枝

vol.2【前編】その2

一朝一門の十番弟子。兄さん、姉さんに支えられながら、“二ツ目”街道をまっしぐらに前進中!

春風亭朝枝さんは昨年、2020年2月に二ツ目に昇進されました。お披露目が終わったタイミングでコロナ禍に見舞われてしまいますが、その運命をモノともせず、ひたすらに切磋琢磨。いまでは二ツ目二年目にして、すでに即日完売のチケットが続出するという、大人気の噺家さんへと成長されつつあります。
インタビューの前編では、そんな朝枝さんの入門エピソードから前座時代のお話を伺いました!

春風亭朝枝インタビュー写真

「楽屋には落語界のスーパースターが全員いらしてて。前座仕事の重大さに震えました」 ――朝枝

千穐楽でようやくアタック。最初は断られたものの、二回目のお願いで入門を許されたそうです。

――晴れて入門を許されて、見習いから前座に。朝枝さんには大きなしくじりはなさそうな気がするんですが、前座時代の思い出エピソードはありますか?

朝枝:朝枝:ありましたよ……(苦笑)。うちの師匠に頼まれて楽屋に荷物を届けたのですが、それを文字通り持っていっただけで、帰ってきてしまったことがあって。「荷物を持ってこい」というのは、それを届けたあと、そのまま師匠に付き添うということだったのですが、それを知らなかったんです。一花ねえさんと一刀あにさん、一猿あにさんに怒られました。翌日、一刀あにさんが一緒に謝りに行ってくれました(笑)。それが一番のしくじりだった気がします。

――(笑)。でも、朝枝さんはとてもきちんとされているので、ほかにはなさそうですよね。

朝枝:与いちや㐂いちあにさんは結構面白しくじりエピソードがたくさんあるんですけどね(笑)。少し話は変わってしまいますが、私が楽屋働きのために楽屋入りして一番驚いたのは、その楽屋に落語界のスーパースターがひしめき合っていたことです。いや、もうスーパースターしかいなくて、素直にそこに一番驚きました! 同時に、その師匠方のお世話や身の回りのことをやらせていただくことがどんなにか責任重大なことかと思い……。一番印象に残っているのは、そのことです。

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――先ほど与いちさんも仰っていましたが、一之輔師匠は「家に来なくていいから、噺をどんどん覚えろ」という教え。一朝師匠も確か、そうでしたよね。

朝枝:はい、そうです。寄席に着物を届けたり、芝居の初日や楽日にそれを持って帰るということはありましたが、ほかはありません。なので、やはり前座時代はひたすら稽古をしていた記憶があります。私は一門の中では末っ子で10番目なのですが、「うちに来ないで稽古しなさいという教えだった」と一之輔師匠がよく話されているようなことは、本当に上のあにさんたちの話で、私くらい下になるとうちの師匠が直接何かを言うというよりは、あにさんたちがされてきたことを学ぶようなスタイルでしたね。

――あにさん、ねえさんが教えてくれるということですね。

朝枝:はい。そういう話を聞かせていただき、うちの師匠はそういう方針なのであれば、それに倣っていこうという感じでした。

――一朝一門はとても温かそうで楽しそうな一門だなと思い、いつも拝見しています。しかも末っ子だから、朝枝さんは皆さんからとても可愛がられそう!

朝枝:本当に皆さん優しいです。いつか恩返しができれば、と思っています。

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散歩→喫茶店→カラオケボックスを巡るという驚きの集中力で、徹底的に噺を頭に叩き込む。

朝枝さんが二ツ目に昇進されたのは、2020年の2月中席。寄席でのお披露目が一通り終わったところで、緊急事態宣言が出てしまいます。

――きっと大変だったと思いますが、朝枝さんがご自身で工夫されてきたことをお話いただけますか?

朝枝:私はまだ本当に運が良かったというか……。寄席での披露目を無事に終えることができましたからね。ありがたかったです。確かに緊急事態宣言が発令されてしまいましたが、事前に先輩方から「二ツ目になったら、前座とは違って仕事はなくなるもの。今までは“労働力”として呼ばれていたけれど、そういうのがなくなるから、ちゃんと落語に向き合わないと仕事もないよ」と教えていただいていたので、仮にあのタイミングでコロナ禍に見舞われなかったとしても、どのみち仕事はなかったんじゃないかと思います。

――二ツ目になったら、仕事は自動発生しないよ、と。そういう心づもりは出来ていたということですね。ではその間はやはり噺をひたすらに覚えようとか、そういう感じでしたか?

朝枝:二ツ目としてどういう落語をやっていくとか、もっと突き詰めていかないといけない時期です。まだ“商品としては未熟”なので、たくさん噺を覚えていかないと。

――「商品として未熟」って素敵な言い方ですね。

朝枝:商品という言い方はよくないかもしれませんが、噺家として未熟だというのは、もちろんそうですから。

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――ちなみに、噺を覚えるのは得意ですか?

朝枝:私、かなり時間がかかるんです……。ひと月くらいはかかっちゃいますね。

――それは、自分の中でOKを出すというレベルが高いんじゃないですか(笑)? 散歩しながら覚えるタイプだと伺ったことがありますが。

朝枝:そうですね。散歩しながらと籠って稽古することと、あと喫茶店でもします(笑)。

――与いちさんは「絶対に家じゃないと覚えられない」と話されてました!

朝枝:そうなんですね。家で仕事ができる方が本当に羨ましい! 私は家にいると、もう、ぼんやり(笑)。家は落ち着くところなので、遊んじゃったりして、まったく集中できないんです。人がいるところか、もしくは完全に何もないところに行かないとダメなんです。注意力が散漫なタイプなんですね、私は……(笑)。

――朝枝さんもまずは習った噺を“書き起こす”タイプですか?

朝枝:はい、書き起こします。書いたものを読みながら、ふらふら散歩をして、疲れたら喫茶店に入って、喫茶店が終わったらカラオケボックスですね。

――めっちゃ長い! すごい集中力じゃないですか。

朝枝:家に帰らなければずっと稽古ができるので、家にはなるべく帰らないようにしています(笑)。そういうのは、天気がいい日に限りますけどねぇ。

とてもよく通る美声で、ときに大笑いしながら、ときに真剣なまなざしを見せながら、入門時のお話からお稽古事情についてまでを語っていただきました!
後編では【寅の子会】での相方であり、可愛い甥っ子弟子にあたる与いちさんへの思いなどをたっぷり伺います! 

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  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA