interview
春風亭朝枝
vol.7 第三回【前編】
スイッチひとつで、若旦那やご隠居さんからパティシエにも! どんどん開花していく朝枝さんの魅力に一目惚れして、引き込まれる人続出中!
今回の【寅の子会】が行われる2月は、朝枝さんが一朝師匠に入門した月でもあり、2年前に二ツ目に昇進した月でもあります。いまや若手のなかでも、その勢いは群を抜き、多くの落語会に引っ張りだこの朝枝さん。高座の上では35歳とは思えない“老成した姿”と若手らしからぬ“巧みさ”が話題となりますが、撮影現場では大声で笑い、カメラの前で楽しんでポーズを取ってくれるムードメーカーでもあります。そんな朝枝さんに、今回もたくさんお話を伺いました。
お兄ちゃん的存在感で、寅の子会を引っ張ってくれる頼もしい朝枝さん!
今回も朝枝さんが都内某所に現れた瞬間、現場の雰囲気がフワリと和やかに。撮影中の与いちさんをからかいながら、支度を済ませて朝枝さんも撮影。順調に終わったところで、ソファスペースでインタビューをスタートしました。
――今回も素敵な撮影でした! 朝枝さんのなりきり力にはいつも感服します。しかも、ようやく腹を割って話せるようになってきましたね(笑)。初回の朝枝さんの人見知りっぷりを、今でも覚えていますよ!
朝枝:あはは。ありがとうございます。人見知りなんで、本当にすみません(笑)。
――でもようやく、少しくだけるというか、ふざけるというか、そんな感じになってきました。
朝枝:そう感じてもらえるようになっていたら、それは良かったです(笑)。
――さて、10月の【寅の子会】はいかがでしたか?
朝枝:一生懸命勉強させていただきました! でも本当に楽しくやらせていただけたんです。お客様が「まったく落語に接したことがない」とか「ほとんど初めて」という方が多かったということで、私が出演するほかの会とは少し違う雰囲気ですよね。
――そうですね。ひとりでも多くの方に【落語の楽しさ】とか【朝枝さん、与いちさんの魅力】を知っていただきたいので。
朝枝:【寅の子会】に来てくださるお客様は「寅の子会だから足を運びました!」という方が多いように見受けられて、それも嬉しいです。ナマの落語を聴いたことがない方々が、【寅の子会】をきっかけに落語が好きになってもらえるように頑張りたいって思います。
――10月の会では『湯屋番』と『紫檀楼古木』をかけていただきました。朝枝さんにとってこの2つはどんな心持ちでやられる噺ですか?
朝枝:『湯屋番』はもうバカバカしい噺なので、本当に何も考えずにぼんやりと、こんなバカな人もいるんだなというのを楽しんでもらえたら嬉しいです。『紫檀楼古木』はすごく好きな噺なんです。何が好きって、ただただ好きです(笑)。なんでしょうね。登場人物がいいですね。とても魅力的だと思いますね。
――前回この2つを選んだ理由というのはあるんですか?
朝枝:前半は本当に何も考えずにぼんやりと楽しんでもらえたらな、と。後半は与いちがトリだったので、与いちに集中してもらえるように『紫檀楼古木』を選びました。そんなに大爆笑!という噺ではないですからね。
――一番印象的だったこととか、ありますか?
朝枝:与いちのお父様に手ぬぐい当たったこと、ですかね(笑)。ああいうことは本当に起こるときには起こるんですよねぇ。お父様がわざわざ仙台からいらしてくださったのも嬉しかったですね。私との最初の出会いが、衝撃的でしたから……(笑)。お父様、「こんなヤツと二人会やるのか!」ってきっと心配なさってと思うので……。
――その話は、またどこかで改めて披露できるといいですねぇ(笑)。さて、今回の撮影はどうでしたか? また前回とは違った雰囲気だったと思いますが。
朝枝:おかげさまで、ありがとうございます!(笑)
――それ、まったく返事になってないです(笑)。
朝枝:いや、本当に楽しませていただきました。前回が宝塚(笑)、そして今回がパティシエということで……。ケーキもお菓子も、全然つくれないですけど。
――えーーー。マカロンつくれるじゃないですか!
朝枝:マカロンは触っただけです(笑)。
普段は見られない、与いちのぎこちない姿を見るだけでも、ちょっと楽しいです(笑)。 ――朝枝
朝枝さんが放つ高座での爆笑のマクラをご存知の方なら「納得!」と思ってくださるかもしれませんが、とにかく場の雰囲気を読むチカラに長けている方。撮影もスムースに進み、素晴らしい写真がたくさん撮れました!
――朝枝さんは慣れてくださったのか、すでに諦めの境地に至ってくださったのか分かりませんが(笑)とにかくポージングや撮影意図の飲み込みが早いんです! カメラマンの資人導さんも言ってましたが、本当に俳優さんみたい。
朝枝:いやいや(笑)。そんなことないですけど。
――与いちさんと一緒に撮影するのはどうですか? 無理矢理やらせておいて「楽しいですか?」って聞くのも気が引けるんですけど……(笑)。
朝枝:(笑)。なかなか見られない光景を見られるのは面白いですよ。今回なんて、与いちがバラを持ってたでしょう? 最高だな!って思いました(笑)。
――持っているというか、背負ってましたね(笑)。後ろ手に隠すように持ってほしかったんですが……。
朝枝:そうそう!! バラってそんなに重いのかって思わせるほど見事に“背負ってる”写真でしたね。そういうぎこちないところとか、そんな与いちを間近で見られるのは楽しいですよ。
――何だか、そういうふうに言ってくださるのは嬉しいです。毎回快くお付き合いいただいて、スタッフ一同、いつも感謝しているんですよ。
朝枝:引き続き、頑張ります(笑)。
――次はプレスタートの会を入れると3回目、本格始動してからは2回目の会となりますが、こんな会になったらいいな、というのはありますか?
朝枝:もう、変わらず。1回目、2回目、3回目と、どんどん楽しんでいただける会になるように、そのために努力していきたいなと思っています。
――前回の会から4カ月経っていますが、ご自身に何か変化はありましたか?
朝枝:変化というか、いまはとにかく色々とお噺を覚えているところなんです。それがずっと続いている感じですね。
――前回のインタビューのときに「コレとコレとコレを覚えている最中です」というのを少し伺っていて、そこからひとつネタおろしされたのが、『岸柳島』でしたね。演芸写真家の橘蓮二さんプロデュースの会、『“極“ vol.10 ~エンゲイマジック~』で披露されたのを拝見しました。
朝枝:ありがとうございます! そうそう。確かに前回のインタビューのときに、船を漕ぐ仕草の話をしましたね。「エアだけど、結構大変なんですよ」ってお話しましたね。師匠に「漕ぐ仕草がさすがに遅いよ」と言われた噺は、まさに『岸柳島』です(笑)。
――あのとき伺ったお噺から、レパートリーは増えましたか?
朝枝:いやいや。この前お伝えしたお噺を引き続き覚えている状況です。早く仕上げないと教わった師匠方に「あいつはいったいいつアゲの稽古にくるんだ!」と言われちゃいますから(笑)。でも、ほかにもこれを習おうかなと思っているのはいっぱいありますよ!
――朝枝さんは優しいのでいつも少しだけヒントを教えてくださるんですが、こちらのインタビューページでは書けないのが残念です! でもこれからの朝枝さんの会で、ネタおろししてくださるんですものね。
朝枝:そうですね(笑)。ごめんなさい。楽しみにしておいてくださると嬉しいです。
- photo by SHITOMICHI
- interview and text by MIHO MAEDA