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春風亭朝枝

vol.8 第三回【後編】

スイッチひとつで、若旦那やご隠居さんからパティシエにも! どんどん開花していく朝枝さんの魅力に一目惚れして、引き込まれる人続出中!

今回の【寅の子会】が行われる2月は、朝枝さんが一朝師匠に入門した月でもあり、2年前に二ツ目に昇進した月でもあります。いまや若手のなかでも、その勢いは群を抜き、多くの落語会に引っ張りだこの朝枝さん。高座の上では35歳とは思えない“老成した姿”と若手らしからぬ“巧みさ”が話題となりますが、撮影現場では大声で笑い、カメラの前で楽しんでポーズを取ってくれるムードメーカーでもあります。そんな朝枝さんに、今回もたくさんお話を伺いました。

春風亭朝枝インタビュー写真

その時々にいらしてくださっているお客様のニーズに合わせた噺を高座でかけられるように――。それが目標です。  ――朝枝

音声が伝わらないのが本当に残念ですが、朝枝さんとのインタビューは常に爆笑の渦。「ちょける」姿もレアで楽しいのですが、落語の話をされる真剣な眼差しや声色も魅力的です。

――今回の開催は2月13日ですが、ちょうど朝枝さんが二ツ目に昇進されて丸2年というタイミングです。二ツ目に昇進されてから、自分が描いていた姿と今の姿のギャップだったりなど、何か思うことはありますか?

朝枝:寄席通いがなくなったので、その分が稽古に使えるという印象です。そんなもんですかね(笑)。もう2年も経ったんですね。ついこの前昇進したような気持ちでずっといるんですよ。

――コロナ禍というもあるかもしれませんよね。

朝枝:確かにそうですね。通常二ツ目に昇進したときにはそのお祝いとして真打の師匠方が地方で行ういろんな会に呼んでくださるということもあるんですが、そういうのがなかったんです。だから地方へ行くこともなくて……。いろんな場所でやってみたいという気持ちはありますね。

春風亭朝枝インタビュー写真

――以前はまったく違うお仕事をされていたじゃないですか? 今の【噺家】という仕事を、朝枝さんはどういうふうに捉えていますか?

朝枝:【個人商売】なんだろうなという感覚です。だからこそ、自分でお客様に楽しんでもらえる噺を優先して覚えていかなくては、と思っています。どんな噺を覚えたらいいだろうか、その時々のお客様にあった噺を仕込んでいこう、とそういう感じですね。

――噺家という職業の居心地はどうですか?

朝枝:それはもう、諸先輩方がその世界をつくってくださっているから、心地良いですよ。私たち二ツ目が寄席にもいかないフワフワした状態でなんとかやっていけているのは、もう先輩たちのおかげなので。

――朝枝さんはもう、いまや多くの方の【推し】になっていますが(笑)、どうですか? 私も朝枝さんの会によく足を運んでいますが、いつも必ずいらっしゃる方々が多くいらして、その熱気みたいなものを感じています。

朝枝:本当にありがとうございます! 本当にお世話になっている方たちばかりで、ありがたいと思っています。だからこそ、同じ噺に偏らないように、いろんな噺をまんべんなくやっていきたいと思うんですよね。

――【寅の子会】のお客様もすっかりおふたりのファンばかりです。朝枝さんだけでなく、与いちさんもそうですが、おふたりの「人を捉えて離さない吸引力」みたいなものには、いつも目を見張っています!

春風亭朝枝インタビュー写真

とにかくひたすらにコツコツと噺を覚えていきたいと語る、真摯な姿。その気持ちが伝わるから、応援したくなる!

今回のトリは朝枝さん。いつ聴いても常に進化を止めない朝枝さんが、どんな噺をかけてくださるのか、【寅の子会】スタッフは全員がとても楽しみにしています。

――前回もこの話をチラリとしたのですが、朝枝さんの噺のすごいところは、同じ噺を聴いたとしても「同じ噺を聴いた気がしない」という印象です。

朝枝:いやいやいや。もう、そんなことはないですよ(笑)。

――コアなファンの方が多いので、きっと細かなくすぐりまで、全部覚えている方もいそうです。きっと私もそのひとりですね。

朝枝:だからこそ、かけられる噺を増やしていきたいという一念です。

――ちなみに、今はおいくつくらいの噺を持っていらっしゃるんですか?

朝枝:だいたい40くらいですかね。

――じゃ、今年中にその倍くらいになりますかね?(笑)

朝枝:何を言ってるんですか!!!(笑) 今年は倍にはならないです! 年間で10本ずつくらい増えていけばいいですかね。

――10本!!! それでも1カ月に1本はネタおろし、というスピードですものね。やっぱり噺家さんというのはすごい職業です。

朝枝:前回もお話しましたが、「若いうちはひたすら噺を覚えていけば、そこから自分に合う噺が見つかるよ」とうちの師匠にも言われていますので、ひたすら覚えていかないと。10本を超えることができたら、「頑張ったな、俺!」という感じです(笑)。あ、ちょっと待ってください。全部ネタおろし?(笑)

春風亭朝枝インタビュー写真

――あれ、おろさないんですか?(笑)

朝枝:昨年末に『朝枝の調べ』という会でお話した『一分茶番』という噺は、蔵出しだったんです。かなり昔に覚えたんですが、そのときはしっくりこなくて、教わった師匠にも苦笑された記憶があります(笑)。でも今なら改めてやれるかなと思っているので、そういう、ちょっと眠っている噺だったり、かけてないネタをやっていけるといいですね。

――そしたら、きっと40が今年中に倍になりますね!(笑)

朝枝:いやいやいや(笑)。それはないですけど、いつかね、倍にしていきたいですね。

――では最後に【寅の子会】への意気込みを教えてください。

朝枝:【寅の子会】のお客様は落語初めてという方も多いので、これをきっかけにもっと落語を好きになってもらえるように、与いちと二人三脚で一生懸命頑張っていきたいと思っています。今回のバレンタイン・スペシャルも楽しみですが、その次ももう決まっていますからね。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!

当日の会場でなければ聴けない「裏話」もたくさん話してくださりそうで、とても楽しみ! もしかしたら、さらに次に予定されている【寅の子会】のことについても、少しだけ話してくださるかも……? 朝枝さんが“会場のお客様”を感じて、かけてくださるお噺にぜひ注目してください!

  • photo by SHITOMICHI
  • interview and text by MIHO MAEDA

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